SIKO FEATURED

「Let’s Paper the World」視察レポート

包装業界レポート

海外大手製紙メーカーMondi(モンディ社)が得意先向けにチェコのプラハで開催したイベント「Let’s Paper the World」に出席して参りました。デジタル化に伴うペーパーレス化が進んでいるといわれる昨今ですが、非常に活気溢れる雰囲気の中で、モンディの商品紹介と今後の紙のマーケットトレンドについて各業界から参加したスペシャリストから解説されました。参加者は約100名で、ヨーロッパに拠点を置くショッピングバッグなどの包材メーカーが中心でした。登壇者は全員英語のプレゼンテーションを行っていましたが、同じヨーロッパといえども言語の問題はあるらしく、同時通訳でスペイン語とチェコ語の対応もしていました。

イベントで印象的だったのは「モンディのポートフォリオ(事業戦略)」と「マイクロプラスチックに起因する紙への回帰」という二点です。このレポートではマイクロプラスチックに対するヨーロッパ地域の物事の考え方と、イベントの翌日に開催された工場見学についてまとめさせて頂きます。

まとめ

マイクロプラスチックに起因する紙への回帰

マイクロプラスチックによる海洋汚染問題が日本人の感覚以上に大きな問題として捉えられていました。マーケティング会社、大手アパレルメーカーの購買部長、接着剤メーカーのエンジニアなど各業界から参加したスペシャリストによるプレゼンテーションが行われましたが、いずれも「環境保護の観点からプラスチックから紙へのシフト」を謳っておりました。

・大手スーパーのカルフールが「顧客に容器を用意させる総菜コーナー」をはじめた
・ヨーロッパでストローをプラスチックから紙製に変える流れにある
・フランスをはじめとする国々でレジ袋(厚さ50μm以下)が廃止された。

などの説明がありました。主催者が製紙メーカーであることを差し引いても、ヨーロッパでの脱プラスチックの波は確実に起きているようです。

冒頭の挨拶で「ドウモアリガトウゴザイマス」という日本語での挨拶を頂く

また、紙製品へシフトするといっても、環境保護の観点から紙への法的制限も厳しくなっているという話もでていました。イベントの中で紙の原料となる木材はFSCの認可を受けたものを使用していかなければならないとのことです。法律・消費者の目線・原料調達の制約などあらゆる要素が厳しくなっていることが言及されていました。

※FSC(R)(Forest Stewardship Council(R)、森林管理協議会)は木材を生産する世界の森林と、その森林から切り出された木材流通や加工プロセスを認証する国際機関。

パネルディスカッションの様子

イベントの最後に行われたパネルディスカッションの際に、弊社より以下の質問を行いました。

「ヨーロッパにおける軽包装のトレンドがプラスチックから紙へシフトしていることは理解したが、ヨーロッパの重袋の分野においてはどうなのか?」

残念ながら、どの専門家からも明確な答えはでませんでしたが、今後ヨーロッパ訪問時における一つのテーマが出来たと捉えることにします。日本の重袋包装のトレンドは、「紙からPEへ」という流れですが今後変化がでてくるかもしれません。弊社は紙袋もPE袋も製造しておりますので、世の中のルールに準じた上で、それぞれの材料の良さを活かしていきたいと思います。

モンディ社Steti工場見学

プラハのホテルからバスで移動すること約一時間半。牧歌的な農村地帯を抜けた先にあるSteti工場の見学をしました。前日に行われたイベントの一環ということでしたが、スケジュールの関係上で限られた時間となってしまいました。説明によると、チェコやブルガリアなどの東欧にある工場に注力しており、Stetiの工場には100億円近い投資をしてボイラーを増強するということでした。ボイラー建設予定地以外の場所でも工事が広く行われており、東ヨーロッパやアジア向けの旺盛な需要に対応する為の投資とのことでした。

工場見学ツアーはチーム毎に行われたのですが、そこにマーケティングスタッフを工場の説明スタッフとは別につけていることも印象的でした。元ジャーナリストの人などが工場見学中の様子の写真撮影をしたり、ツアー参加者に随時インタビューをしたりするなど積極的に「どういう会社なのか」を外部に発信しているように感じました。また、その姿勢は社内に対しても同様で、四半期毎に新しい従業員を紹介する社内報を作成していることからも社内外へのブランディングに注力していることが伝わってきました。

最後に

イベント初日に地元レストランで晩餐会が開催されました。同じテーブルについた人は名刺交換をせずに会話をしていたことが衝撃的でした。会話の内容は仕事よりも、文化や歴史などが大部分を占めており、同席のドイツ人が週に二回合気道を習っているので「日本人としての合気道への見解」を求められて困ったこともいい思い出です。帰属している企業や肩書きなどは関係無く「アナタの意見を聞かせて下さい」というスタンスに欧米らしさを感じました。