SIKO FEATURED

前副社長インタビュー 後編

漏れないLAB

漏れるということは、中のものが外に出るだけではなく、
外のものが中に入ってくる可能性があるということ

改めて前さんのご経歴をお伺いさせてください

前:私は1982年に入社して、それからしばらく埼玉の工場におりました。
その後1993年に東京の営業に配属になって、そこからはずっと営業です。そして営業部長から事業部長、副社長という形でシコーで働いてきました。

そして1997年に福島の設備導入にも関わってきたわけです。
先ほど(前編)もお話ししましたが、福島の紙袋の設備導入はチャレンジでした。当然営業としては何とか売っていかないといけない。設備機能を活かして、手貼りのマーケットの開拓ですね。

袋が「漏れない」という発想は当時はなかったと言ってもいいと思います。我々の商品は基本、差別化できるもんじゃないんですよね。だからこそ「漏れない」ではなく、多少漏れたとしても汎用性が高く、少しでも安いものをお客様は当然求める。

「漏れない」はそこまで当時は重要なポイントではなかったのですね。その中でなぜシコーは「漏れない」にこだわっていったのでしょうか?

前:袋は多少は漏れるものだという感覚ではあったのですが、そんな時に食品の異物混入の話題が非常に大きく取り沙汰される時がありました。そこからですね、「漏れない」ということにお客様がかなり厳しくなったのは。

つまり、漏れるということは、中のものが外に出るだけではなく、外のものが中に入ってくる可能性もあるということです。

また飲食店にも大きな変化もありました。例えばショッピングモールの中でパンを焼くようになり、うどん屋さんも自分たちで製麺するようになり、店頭や店先に大きな袋を見かけ始めたのは記憶にも新しいのではないでしょうか。私たちのような会社が作っている大きな袋が一般の皆さんの目にふれるようになったということです。

ですので、「外部から入ってくる袋に粉がついているのは許されない」という厳しい基準にも変化していったような気がしています。その中で、四隅叩きテストなども始まりました。先ほどもお伝えした通り、これまでは袋は多少漏れても仕方ないという通例だったのですが、漏れることがあってはならないということになってきました。

そんな折に、とあるコンペに参加させていただきました。その中にあった四隅叩きテストにおいてシコーの袋が一番漏れなかったという結果になりました。それが福島工場の製品だったんですね。その時、福島工場のみんなに言いましたよ。うちの袋はこれだけ評価されてるぞって。嬉しかったですね。

私はよく言うんですけど、その時歴史が動いたんちゃうかと(笑)

「漏れない」っていうことに対して、もっと出来ると。お客さんが困ってんのやったらシコーの袋でなんとか解決できるんちゃうのと、そういう自信になりましたね。

お客様の評価が自信になった。
シコーの「漏れない」の原点は、とにかくお客様の声を聞くこと

福島工場はすごいですね。

前:すごいですよ。言い過ぎかもしれませんが、生きるか死ぬかの経験をしておるわけです。それは強いですよね。やっぱり何よりも自分で自分たちの機械をメンテナンスしている経験、粘り強さですね。仕事に対する取り組み姿勢がすごい真摯というか。

袋はなかなか差別化できるものではありませんでした。しかし、その中でも両底袋っていうのは、差が出ます。それが内容物によって「漏れるか漏れないか」ということです。うちの商品はお客さんに評価されてるぞと。うちの袋は技術的にも業界でナンバーワンちゃうかと。

振り返ってみると、福島工場は何もないところからスタートしたわけで、ほとんどが新規のお客様でした。だからこそ、とにかくお客様の生の声を大事にしたわけです。営業と製造が取引先に一緒に行くという機会は多かったですね。製造現場の担当なのに、充填の立ち会いに行ったり、実際にいろんな声を直接聞かせていただきました。そういうお客様の生の声を聞いて、持ち帰ってフィードバックした。お客様からこういうふうに褒められたよとか、ここを改善してくれと言われたよとか。

お客様がいて、シコーの営業がいて、営業から工場、そして現場の人間がいいものを作る。これが割と私も望んでたところではありますね。一気通貫で、お客さんの生の声が聞こえるというところがすごい強みだったんじゃないかなと思いますね。

技術はもちろんですが、熱意がすごいですよね。

前:そうですね。なんとかお客様のニーズに応えていこうという思い、そしてそれを実現出来る技術はすごいですよ。自分たちの技術に自信がなければ、袋ではなく機械を買ってもらえればいいし、いい機械があればそれでいい。でも、今ある機械でやれることをやりましょうというのは大きい。たぶん同じ機械を使ってたとしても差が出ると思いますよ。

紙袋って紙と糊で折って畳んで切って貼るだけです。だからこそ技術が出る。
どこに糊をつけたらいいのとか、どこをどれくらい押さえたらいいのとか、すべては工夫ですよね。

「漏れない」追求し続け、挑戦をやめない。
シコーに言えば何とかしてくれると思ってもらいたい

探究心もすごいですね。

前:そう、探究心がすごい。例えば同業他社さんの袋でも、毎回分解してどんな作り方をしてるのかと調べてくれますよ。これは漏れそうだとか、逆にこういう工夫してるのかというのをちゃんと調べてる。そしてそれをノウハウにしてるんですね。

福島には「漏れない」を検証できる実験室もつくられたとか?

前:「漏れない」をどう具現化していくのかということで、福島工場の中に実験室を作りましたね。最初は水を入れたりして。でも水は漏れなくても粉は漏れるかもしれない。だから充填機メーカーさんから充填機を購入して、ベビーパウダーなんかを入れて漏れないために実験を日々繰り返しています。シコーオリジナルの評価基準ではあるのですが、かなり高いレベルで「漏れない」を追求しています。

どうしても手貼りは人がやっているので、技術の継承はもちろん、途中で辞めてしまうケースも少なくありません。ですので、手貼りレベルのものを機械貼りで出来るようにしていくことで安定供給を可能にしたことは非常に大きいと思います。お陰様で手貼りでやられておられた業者さんからもシコーならということでお取引先を引き継がせていただくこともあります。

シコーの技術は他社にはなかなか真似できないのではないでしょうか。

前:難しいと思いますね。我々はドローンで工場内も公開しているのですが、真似するのは難しいでしょうね。技術的にはもちろんですが、大きいのは熱意や思い、そしてこれまで積み重ねてきたお客様の生の声ですね。営業などがお客様から吸い上げて工場にフィードバックしている蓄積や内容までは公開してないですからね(笑)

次世代への継承と人の育成は今後の「漏れない」に対しても重要ですね。

前:次世代の育成に関しては福島の製造チームもかなり力を入れています。そして実際に育ってきてます。ただ我々の時代と今は違うので、やり方を変えていく必要はあると思っています。今までは背中を見て覚えていくことが多かったのですが、今はYouTubeを見てオペレーターを育てられないかとも思っています。昭和と令和は違いますからね(笑)。それで全部がうまくいくとは思ってませんが、後から見返したりも出来る。そうやって教えていくことで教える側のレベルも上がっていくのではないでしょうか。

シコーは常に人を育てていくということを大事にしたいと思っています。

もしかするとAIで袋が出来る時代になるかもしれません。でも我々はやっぱりものを作ってる人がお客様にちゃんと評価されて喜ばれるっていうものを目指したいと思っています。

またシコーでは感動賞(※2)という制度も作っています。

現場のリーダーが実際に働いている人たちのいいところを見つけようと始めたものです。ちょっとした嬉しかったことでもいいんです。そういう人のいいところを見つけると言うのは大事だと考えています。

また、シコーには応援の文化みたいなのがあります。例えば広島工場で人が足らずにちょっと困ってたら、福島や各工場から応援を出します。

最後に前さんはシコーで長く働いていらっしゃいます。今後のシコーはどうなって欲しいですか?

前:面白い会社であって欲しいですね。挑戦し続けてお客様の声をちゃんと形にしていくことをやめないことでしょうか。お客様が困った時にシコーに言ったら「何とかしてくれるんちゃうか」みたいな会社になればいいですね。ほけんの窓口ではないけど、袋の窓口にはなりたいなと思います。

※2 感動賞
月1回の全体会議の中で、各営業所と各工場から社員に「こんなありがとうや感動があった」ということを報告し、表彰するというもの。利益に直接つながらない案件でも気軽に起案できる仕組みがシコーらしい。受賞者には賞状とチョコレートがもらえて、ちょっぴりうれしい。