SIKO FEATURED 特集記事
「漏れない」試験室を探る
福島製造部はシコーグループの基幹工場として位置付けられており、「漏れない」袋の最前線であり中心だ。
工場自体は2023年に旧工場から今の場所に移転し新たに建て替えられている。シコーの中でも最も新しい工場だという。海外輸出製品の生産も含め最適なレイアウトになっており、生産ラインには旧工場から移管された生産設備とともにこれまでになかった自動ラインも導入している。
そんな福島工場では、約40名のスタッフでシコーの「漏れない」袋を製造している。
今日は福島工場の内部を案内してもらう。
目的は漏れない袋の秘密と、福島工場が移転された際に新設されたという試験室。
案内をしてくれるのは岡山工場長と製造現場担当の大内さん。福島工場を知り尽くしている2人だ。
工場の中に入る前に岡山工場長の案内で、メッシュキャップを被り、除塵機(じょじんき)で埃を吸い取り、最後にはエアシャワーをする。
いよいよ工場の中へ。工場は2023年に新しくできたこともあり、とても綺麗で衛生管理も徹底されている。
岡山工場長:「漏れないのはもちろんのこと、食品会社さんからは製造環境・入場手順などのご指摘もあるので、環境面・防虫管理・異物管理については気を遣っています。」
福島工場の内部は、見渡す限り広い。とても広い。

巨大な機械が並び、荷役運搬車が綺麗に積まれた大量の袋を移動している。働く皆さんはお互いに声をかけながらも、時折モニターに目をやりながら何かを確かめている。
とにかく皆さんが集中して作業しているので、機械音が大きいはずなのに話す言葉の大きさに気を遣う。
岡山工場長と大内さんが工場の中を案内してくれた。
岡山工場長:「福島製造部では、両底袋や片底袋と呼ばれる袋だけで、1日平均約5万袋を製造しています。それ以外にお米の袋も約5万袋です。それをここにいるスタッフで製造しています。今日は忙しいので、お昼休憩をずらすローテーションですね。お昼休憩以外にも決まった時間に休憩時間もあります。」
工場の中を案内してもらっていると、ある機械の前で立ち止まって教えてくれた。
岡山工場長:「このプレス機は元々設置されているものですが、これに自分たちで改良を加えて、更に効果が出るようにしました。改良工事もメーカーさんにお願いしたわけではなく、工務担当とラインスタッフで工事を実施しました。当社のオリジナルですので、写真はできるだけご遠慮ください。」

インタビューを通じて糊付けの重要性は話を聞いていたのだが、自分たちで機械を改良してしまうというのは、もはや袋を作るというよりはメカニックだという印象すら持ってしまう。更に話を聞くと、機械のメンテナンスも自分たちでするらしい。
岡山工場長:「できることはなんでもやりますよ。ああすればいい、こうすればいいという中で自分たちで作ったり、メンテナンスしたりしたほうが理想に近づけます。後で試験室にもご案内しますが、何度も製造しては改良を繰り返し、またお客様の声を聞いてはさらに工夫してきています。」
一つひとつの機械にも福島製造部の方々の工夫が詰まっている。
「漏れない」を追求していくために日夜努力を重ね、自分たちで機械までカスタマイズし、メンテナンスもしているというのはすごいと思わされた。
岡山工場長に話を伺いながら工場の中を案内され、今回の一番の目的である漏れない試験室に向かう。
福島の工場内にある試験室は「漏れない」を追求する、いわば実験室だ。漏れないための検証はもちろん、耐久性や滑りなど袋に関してのありとあらゆる調査がされている。
試験室に入ると目の前には見たことのないような大きな機材が並んでいる。
その横には、小麦粉から米粉、シリカやカーボンといったあらゆる粉を保管した容器が並んでおり、その数は20を超えているとのことだ。

大内:「全ての粉(内容物)にできるだけ対応するように、粉漏れ試験時に使用する試料は、粒子が細かく且つ人体に害のないものを使用していますが、本採用前に少しでも漏れに不安がある場合は、お客さんが実際に詰められる内容物をいただいて、それを使って試験をすることもあります。」
岡山工場長:「基本的に初めてのお取引はもちろんですが、営業担当からも様々なお客様の要望もあがってきます。その全てに対応できるとは言いませんが、できる限り対応をしていきたいので、実際に使われる可能性のある粉や内容物は常時置いてありますね。なければ取り寄せます。」
では、実際に実験をしてみましょうと、用意されたのは見た目では分からない同じ袋が2つ。
大内:「福島製造部で製作した袋と、弊社商品ではない袋を用意しました。この2つに同様の方法で同じ内容物を入れて実験してみたいと思います。では、袋に空気と一緒に粉を入れますね。吸い込んでも害のない粉を使うので心配はいりませんよ。」
なんかちょっと怖い。
大内さんが袋に粉を入れる。確かに内容物の多くは粉なので、少しあっけなさも感じたが、大内さんは目の前にある充填機に粉を入れた袋を差し込むと大きな音と共に袋がみるみるうちに膨らんでいく。
大内:「これで中に粉が入った状態になります。空気と一緒に入れないと粉は軽いので大量に入れるのであれば袋の中に入りません。ですので、この機械では通常の充填と同じ方法を再現しています。では袋を閉じますね。」
袋に入った状態であれば、特に漏れている様子はないと思っていると、
”パン!パン!パン!パン!”

いきなり袋を思いっきり叩き始めた。これがあの袋叩き実験だと思い出した。
(前のインタビュー参照)
最初に叩かれたのはシコー製品ではない袋だ。
叩いた瞬間に底の角の部分から空気と一緒に白い粉が舞っているのが分かる。
大内:「これが漏れるということです。」
漏れた粉は試験室の床に落ちていく。
その後、実際に袋の底を見せましょうかと、底面の糊を剥がして見せてもらうと、糊付けが甘い箇所があり空洞になっているため、素人でもそこから粉が漏れているのが分かる。
確かに害のない粉を使って実験をしているので良かった。
仮に実際の袋として納入していく際に、内容物が漏れてしまうと大変なことになってしまう。人体にも影響が出ることはもちろん、黒や赤、青など色がついているものが漏れてしまうと、工場全体がその色になってしまうのではないか。
次に取り出したのは福島製造部で作られている袋だ。見た目は全く同じ。
”パン!パン!パン!パン!”
何度叩いてもシコーの袋は漏れない。
大内さんは笑顔で話してくれた。
大内:「私たちの袋は漏れないですよ。これまで何十回何百回、何千回と繰り返してきていますからね。試行錯誤の積み重ねです。こうした実験を繰り返していくことで漏れないを追求しています。」
最初の袋と同様にシコーの袋も分解してくれたが、確かにしっかりと糊付けがされており、隙間に粉が入っていないことも確かめられた。
大内:「先ほどのプレス機械もそうですが、シコーの商品は糊付けに徹底的な工夫と試行錯誤をしています。それをベースに、貼り付け方法や機能を追加して、過去に特許取得もしています。」
紙と糊でしか作られていない袋にもかかわらず、他の袋とこれだけ差が出るものなのか。
しかも特許まで取得しているというのは、本当に試行錯誤と工夫の歴史だと思い知らされた。
次にやってくれるのは落下実験だ。

落下試験はJISで定められており、専用の試験機で実施している。
実際に積荷として袋を運ぶ場合は様々なことが想定される。その一つが落下することだ。トラックから運ぶ際、そして店舗に納入される際など落下のリスクは常にある。その落下において袋から内容物が漏れることはあってはならない。シコーの袋は様々なケースの中でも漏れないを追求している。
落下実験は約1.2mの高さから実際に内容物の入った袋を落とすというものだ。
実際にこんな高さから袋を落としても漏れないのかと少し心配になる。
機械のアームが袋を抱え、少しずつ高さが上がっていく。
そしてある高さになって止まったと思ったその瞬間、とてつもない大きな音とともに袋が地面に叩きつけられる。
大内:「実際にはこれを何回かやって耐久性を確かめます。落下試験で紙袋の耐久性を確認し、粉漏れ試験で内容物が漏れないかどうかを確認する。両方をクリアするのはもちろんのこと、クリアできなかった場合も自分たちで検証して改善策を練り、最終的にはお客様のもとへ万全な商品をお届けしたいと思っています。」
地面に叩きつけられた袋を見てみると、やはり漏れていない。
実験が終わり、大内さんにシコーの「漏れない」について改めて話を聞いた。
大内:「今見てもらった実験とその過程で出来上がった袋に私たちは自信を持っています。また実験だけしていれば良いものではありません。これ以外にも袋を自分たちで分解したり、検証したりしています。面白いのは、そういうことをしているとみんな興味を持って集まってくることですね。みんな袋が好きだと思いますし、お客様に喜んでもらいたい。私たちはこれからもシコーの漏れないを追求していきたいと思います。」
また試験室の存在は、技術の継承と次世代の成長にも繋がっているのだという。
大内:「この試験室では、製品品質の向上はもちろん、お客様のために日々様々な試験を繰り返しています。それだけではなく、次世代への技術や漏れないことを継承していくためにもとても重要だと思っています。実際に次世代の人と一緒に考えながら、話しながらやっていくことは本当に大事。福島工場には女性のオペレーターもいます。様々なスタッフと「漏れない」を追求していくためには、私たちの世代とは違うやり方や考え方も取り入れて、共に頑張っていきたい。」
試験室を後にして、工場を改めて見渡した。
広大な工場の中で、袋に対して真摯に仕事をしているスタッフからは「漏れない」への熱意や自信のようなものが感じられる気がした。
「漏れない」袋には、試行錯誤や実験の繰り返し、福島製造部の熱意、そしてお客様への想いが詰まっている。きっとそれらが今のシコーの漏れないにつながっているのではないか。
包むかたちを創意する。シコーのコンセプトを体現する現場はそこにあった。